甄嬛、雍正帝の寵愛を受けるも早くも後宮の暗闘に巻き込まれる
秀女選出において、雍正帝は甄嬛(シンケイ)に強い関心を示し、
自ら封号を下賜するほどの寵愛ぶりを見せました。
この状況を敏感に察知した皇后は、表向きは雍正帝の意を汲む良妻賢母を装いながら、
実は周到な策略を巡らせていたのです。
甄嬛の住まいを巡る攻防戦
承乾宮から碎玉軒への転落
最初、皇后は甄嬛を雍正帝の執務場所である養心殿に近い承乾宮に住まわせることを提案しました。
しかし、華妃の横槍により、甄嬛の住まいは碎玉軒という粗末な場所に変更されてしまいます。
碎玉軒とはどのような場所か
碎玉軒は本来、御花園での音楽や演劇鑑賞の際に、
身分の低い側室たちが皇后や皇帝に遠慮しながら集まる場所でした。
その特徴は以下の通りです:
- 元々は居住スペースではない
- 東西六宮に比べて建物のグレードが大幅に劣る
- 粗末で壊れかけた状態
- 儲秀宮の裏手に位置
- 現在の紫禁城の地図には存在しない
後宮には西に六宮、東に六宮があり、
いずれも壁に囲まれた中庭を持つ独立した四合院造りで、
通常一つの宮に複数の妃嬪が住むのが慣例でした。
しかし甄嬛は、宮でさえない格下の軒に住むことになったのです。
皇后の緻密な四重戦略
皇后の策略の巧妙さは、決して自らが悪者とならないよう、
他者を操って目的を達成する点にあります。
策略① 甄嬛の待遇を意図的に悪化させる
皇后は華妃の横槍を予測した上で、あえて条件の良い承乾宮を提案しました。
これにより華妃の怒りを刺激し、結果的に甄嬛をより劣悪な碎玉軒に追いやることに成功。
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その後、何食わぬ顔で「あそこは寂しい場所だから桂花を送るわ」と慈悲深さを演出しています。
策略② 華妃牽制のための人材配置
冷静で賢い沈眉庄を咸福宮に配置し、敬妃と共に華妃を牽制する布陣を敷きました。
沈眉庄と華妃の衝突は時間の問題と読んでいたのです。
策略③ 下位妃嬪同士の対立を煽る
鍾粹宮の富察貴人のもとに、秀女選出時に安答応に難癖をつけた夏常在と安答応を同居させ、
意図的に対立を煽りました。
人物関係の構図:
- 富察貴人: 満人で皇后に寵愛されているが、それを理解せずに夏常在に見せびらかす
- 夏常在: 富察貴人より位は低いが愚かで、安答応を痛めつける
- 安答応: 最も身分が低く、生存のため後ろ盾を求めざるを得ない状況
皇后は安答応が追い詰められて自分を頼ってくるのを待っていたのです。
策略④ 華妃の残虐性を際立たせる演出
皇后は夏常在に多くの贈り物をし、自分が皇后の寵愛を受けていると錯覚させました。
夏常在は宮中で堂々と「皇后派」を自称し、悪目立ちした結果、
華妃から残虐な制裁を受けることになります。
この一連の流れにより、新参の側室たちは華妃派を避け、
結果的に皇后の後宮での地位が安定したのです。
まとめ:権謀術数の極意
皇后の戦略の本質は、決して自らが直接手を下さないことにあります。
表向きは慈悲深い皇后を演じながら、
実際には他者を巧みに操り、彼らに汚れ役を担わせる。
この高度な心理戦こそが、後宮という権力闘争の舞台で生き抜く術なのです。
甄嬛伝は単なる宮廷ドラマではなく、組織内の権力構造や人間関係の機微を描いた、
現代にも通じる深い洞察に満ちた作品と言えるでしょう。