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『三国機密』に見る理想政治論 ~伏寿が語る「徳治主義」と崔琰の心境

論語に込められた政治の理想

伏寿が崔琰の協力を得ようと語った言葉は、『論語』為政篇の冒頭にある孔子の有名な教えです。

爲政以德譬如北辰居其而衆星共之

「政を為すに徳を以てすれば、譬えば北辰の其の所に居て、衆星のこれに共するがごとし」

この言葉は、政治における「徳治主義」の核心を表現しています。北極星が動かずにその場所にいるだけで、天の全ての星々がその周りを正しく巡り、まるで拝礼するように位置を保つように、為政者が徳をもって治めれば、人々は自然と心服し、秩序が生まれるという思想です。

天帝の都としての北極星

古代中国の宇宙観では、天帝の都は不動の北極星に位置し、その周囲の星々は全て天帝に向かって拝礼していると考えられていました。天帝の妃や役所も北極星近くの「紫微垣」(しびえん)という宮殿にあるとされ、これが後の「紫禁城」の名前の由来にもなっています。

この宇宙観を政治に重ね合わせることで、理想的な統治者像が描かれているのです。

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崔琰の心境の変化

物語の中で、崔琰は複雑な立場にありました。

  • 元は袁紹陣営の優れた儒学者
  • 袁一族離散後、敗戦処理として鄴の戸籍引き渡しを担当
  • 漢王朝の凋落に深く心を痛めていた
  • 曹操からの誘いに困惑し、当初は断るつもりだった

しかし龍平から「そなたがいれば漢王朝に望みがある」と言われたことで、崔琰の心境は変わります。高潔な儒学者である彼にとって、この言葉は単なる勧誘ではなく、理想を実現する可能性を示すものだったのでしょう。

戦乱を終わらせる理想主義

「今は雌伏の時ですが(潜龍在淵)中原や江南の民を、忘れたことはありません」という伏寿の言葉からは、現在は力を蓄える時期であっても、皇帝は、民のことを常に思い続けるという姿勢が伝わってきます。

この場面は、戦乱の世を真に終わらせるのは武力や権謀術数ではなく、孟子のような理想主義なのかもしれない、という問いを観る者に投げかけています。力による支配ではなく、徳による感化こそが人心を真に統一し、持続可能な平和をもたらすのではないか――そんな希望を感じさせる印象深いくだりです。

 

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