先日、春日大社の大鎧展を訪れました。そこで出会ったのが、展覧会の「西の横綱」とも言える 国宝赤糸威大鎧(竹虎雀飾り) です。春日大社のホームページには「14世紀源義経奉納」と記載されていますが、実際に目の当たりにして、いくつかの疑問が湧いてきました。
竹虎雀飾りに込められた意味
まず、この鎧の装飾について説明しておきましょう。竹虎雀飾りには、それぞれ深い意味が込められています。
- 竹: 常緑で地面に深く根を張ることから、生命力にあふれ、子孫繁栄を意味する
- 虎: 武運があることを象徴する
- 雀: 厄をついばむとされ、災いを避け、豊かさをもたらすことを意味する
あまりにも豪華すぎる装飾への疑問
実際に拝見した国宝赤糸威大鎧(竹虎雀飾り)は、想像を絶する豪華さでした。金細工の竹の木の下で、金の虎が静かにたたずんでいます。そして何より驚かされたのが、金細工の竹やぶにちりばめられた 100羽の金の雀 です。それぞれが異なる形をしており、職人の技術の高さと、かけられた費用の莫大さを物語っています。
ここで素朴な疑問が生まれました。源義経は、これほどまでに金持ちだったのでしょうか?
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なぜ春日大社に奉納?
さらに疑問なのが奉納先です。源義経がこれほど高級な品を奉納するとしたら、武神である八幡様ではないでしょうか。春日大社への奉納理由が、どうもしっくりきません。
保存状態の良さへの違和感
他の鎧と比較して気になるのが、古いはずなのに 綺麗すぎる ということです。いかに保存状態が良いとはいえ、この美しさには違和感を覚えます。
足利義満説への転換
これらの疑問から、私は 足利義満説 がより説得力があると考えるようになりました。
今回の展覧会は、南朝の悲運の天皇の遺物と、その遺志を継いだ後南朝皇子が600年の時を超えて出会うという、歴史的な意味を持つものではないでしょうか。そこに、南北朝統一に尽力した足利義満の兜が静かに佇むという構図こそが、この展覧会の真の意味なのではないでしょうか。
まとめ
歴史の謎は、時として定説を疑うことから新たな発見が生まれます。春日大社で出会った国宝赤糸威大鎧(竹虎雀飾り)は、単なる美術品を超えて、中世日本の複雑な政治情勢と文化的背景を物語る貴重な史料なのかもしれません。
皆さんも機会があれば、ぜひ実際にご覧になって、ご自身の目でこの謎に満ちた名品を確かめてみてください。歴史への新たな視点が生まれるかもしれません。