中国ドラマ「ミーユエ 王朝を照らす月」のエンディング曲『伊人如梦』をご存知でしょうか。この美しい楽曲には、中国最古の詩集『詩経』に収められた名詩「蒹葭」のエッセンスが息づいています。
『詩経』「秦風篇」『蒹葭』―2500年前の恋心
「所謂伊人、在水一方(想い人は水の向こうに)」
この一節は、紀元前7世紀頃に成立したとされる『詩経』の「秦風篇」に収められた「蒹葭」という詩から生まれた言葉です。
『詩経』の「秦風篇」『蒹葭』の簡単な日本語訳
「葦は緑に染まり、露は霜のように白く」
詩は晩秋の朝の風景から始まります。広大な葦原が緑に色づき、朝露が白い霜のように輝く。
冷たく静寂で、霞に包まれた幻想的な情景の中で、主人公は問いかけます。
「愛する人はどこにいますか?」
「愛する人」は「水の向こう側」、「所謂伊人、在水一方」
伊人:想いびと
一方:反対側
近くにいながら遠くにいるように思われます。
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彼女を求めて上流へ行き、彼女を求めて下流へ行き、彼女を探しますが、
道は険しく長く、彼女を探しても、出会うことはできません
道は険しく、登るのは困難です
道は曲がりくねっていて危険です
すぐそこにいそうなのに、決して到達できません
この詩の意味するところ
手の届くように見えながら、到達できない人生における多くの美しいものがある
求めても求めても得られない
胸を締め付ける思い
人生における美しき無力感と後悔をあらわしています
この詩が2500年もの間、人々の心に響き続けています。
ドラマ「ミーユエ」との響き合い
戦国時代を生きた宣太后・羋月(ミーユエ)の波乱の人生。
権力を手にしながらも、真の愛や平穏を求め続けた彼女の姿は、まさに「蒹葭」の世界観と重なります。
エンディング曲『伊人如梦』(想い人は夢のごとく)というタイトル自体が、手の届かない美しいものへの憧憬を表現しています。



