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『大学』が説く人間成長の道 ―格物致知から天下平和へ―

はじめに

儒教の四書の一つである『大学』は、人間がどのように成長し、社会に貢献していくべきかを説いた古典です。今回は、その冒頭に記された有名な一節を通じて、立派な人間になるための道筋を探っていきたいと思います。

大学の三綱領 ―人間成長の三つの目標―

「大学の道は明徳を明らかにするに在り、民を親た(あらた)にするに在り、至善に止まるに在り」

この言葉は、大学の道における三つの根本目標を示しています。

第一に「明明徳」 ―天から授かった立派な徳を明らかにすること。私たち一人ひとりに本来備わっている美しい徳性を、曇りなく輝かせることです。

第二に「親民」 ―その徳によって人民を感化し、人間を成長させること。自分一人が立派になるだけでなく、周囲の人々にも良い影響を与え、共に成長していくことを意味します。

第三に「止於至善」 ―最高の善の境地に至って止まり続けること。最善の状態に到達し、そこに安住し続けることです。

心の段階的な成長

至善の境地を目指す過程で、人の心はどのように変化していくのでしょうか。『大学』は次のように説きます。

知止→定→静→安→慮→得

至善の境地に止まることを知った後、心が定まります。心が動揺せずに定まった後、静かな境地に行き着きます。静かな境地に辿りついた後、心身は安らかとなります。心身が安らかになった後、物事に対する思慮を働かせられるようになります。そして物事に対して思慮深くなった後に、得るべきもの(明徳)を得ることができるのです。

ここで重要なのは、「物には本末がある、事には終始がある」という認識です。物事の先と後にすべき所、つまり優先順位を正しく知れば、大学の道は決して遠いものではないのです。

八条目 ―外から内へ、内から外へ―

では、具体的にどのような順序で修養を積んでいけば良いのでしょうか。『大学』は有名な「八条目」を示します。

外向きの流れ(目標の設定)

「古代の明徳を天下に対して明らかにしたいという者は、まず(天下よりも先に)その国をよく治める。その国をよく治めたいという者は、まず(国よりも先に)自分の家族を整える。その家を秩序ある形で整えたいという者は、まず(家よりも先に)自分自身の身・道徳を修める」

天下を平和にするという壮大な目標も、実は自分自身を修めることから始まるのです。

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内向きの流れ(修養の起点)

「その身を修めたいという者は、まず(身よりも先に)自分の心を正しいものにしようとする。その心を正しくしたいという者は、まず(心よりも先に)その意志を誠実なものにする。その意志を誠実にしたいという者は、まず(意志よりも先に)その知を高めようとする。知を高めるとは、物・事物の仕組みや原理原則、つまり基本教養としての六芸(りくげい)を理解するということにある」

ここで注目すべきは、すべての起点が**「格物致知(かくぶつちち)」**にあるということです。

格物致知 ―学びの出発点―

格物致知とは、基本教養・基礎科目である六芸(礼儀、音楽、弓術、馬車を操る術、書道、算術)を習得することによって、物・事物の仕組みや原理原則・本質の理解に至ることを意味します。

つまり、君子(立派な人)になるための起点は、しっかりとした基礎教養を身につけることにあるのです。現代風に言えば、幅広い教養教育やリベラルアーツの重要性を説いているとも言えるでしょう。

内から外へ ―個人から社会へ―

そして、格物致知から始まった修養は、次のように展開していきます。

格物→致知→誠意→正心→修身→斉家→治国→平天下

「六芸の基本教養を極めた後に、知に至る。知に至って後に、意志が誠実となる。意志が誠実となって後に、心が正しくなる。心が正しくなった後に、我が身が修まる。身を修めて後に、家の秩序が整う。家が整って後に、国が治まる。国が治まった後には、天下全体が平和になる」

おわりに ―今を生きる私たちへ―

『大学』が示すこの道筋は、決して古くさい教えではありません。

まず基礎をしっかり学ぶこと。そこから得た知識をもとに誠実な意志を持ち、心を正しく保つ。そうすることで自分自身を修め家庭を整え、さらには社会に貢献し、最終的には世界の平和にまで至ることができる――。

このように、個人の内面的な成長と社会的な貢献が一本の道でつながっているという『大学』の思想は、現代を生きる私たちにも多くの示唆を与えてくれます。

まずは格物致知から始めましょう。 しっかりとした基礎教養を身につけ、物事の本質を理解することから、すべてが始まるのです。


参考:『大学』は『礼記』の一篇で、朱子学において『論語』『孟子』『中庸』とともに四書の一つとされています。

 

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