中国の歴史ドラマ『大宋宮詞』第44話で描かれた寿康公主と耶律宗願の恋愛エピソードは、
実は創作だったということをご存知でしょうか。
今回は、このドラマのエピソードを通じて、古代中国の女性成人式「及笄の礼」について詳しく見ていきましょう。
ドラマの設定と史実の違い
『大宋宮詞』では、遼の第6皇子・耶律宗願が皇太子の加冠の礼の祝賀を伝えるために宋に派遣され、
そこで寿康公主の及笄の礼に参加します。
耶律宗願は寿康公主に一目惚れし、趙恒に婚姻を申し出て許可されるという展開でした。
しかし、実際には:
- 寿康公主は架空の人物
- 耶律宗願は蕭家の妻を迎えており、この恋愛話は存在しない
ドラマでは男性の成人式(加冠の礼)を描いた後、
女性の成人式も紹介したいという制作意図から、この創作エピソードが生まれたと考えられます。
及笄の礼とは何か
及笄の礼は古代中国の女性の成人式です。
名前の由来
- 笄:髪を束ねるための古代の簪(かんざし)
- 及:到達するという意味
- つまり「かんざしをつける年齢に達した」という意味
儀式の内容
15歳になった女性が髪を結って簪を挿し、大人になったことを示す儀式でした。
成人式が持つ社会的意味
古代の成人式は、単なる年齢の節目ではありませんでした。これまで家庭で責任のなかった「孺子」(子供)から、社会的責任を果たす大人への転換点を意味していました。
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成人の三つの責任
- 親を扶養する
- 子供を育てる
- 家庭や国を守る
高貴な女性の及笄の礼:三段階の加冠
皇女などの高貴な女性の成人式では、三回にわたって異なる冠が授けられました。
第一段階:緇布冠
- 黒い布の冠を授与
- 意味:「初心を忘れないようにしなさい。幼き心をすて、成人の徳を持つようにしなさい」
第二段階:皮弁冠
- 皮弁冠で簪が与えられる
- 意味:「威厳を保ち、温和で、慎ましやかで、倹約と礼儀を守りなさい」
第三段階:爵弁冠
- 皇女の冠(社会での地位を意味する冠)を授与
- ローブと帯も与えられる
- 意味:「奢ることなく、身をおさめなさい」
まとめ
『大宋宮詞』の寿康公主のエピソードは創作でしたが、
そこで描かれた及笄の礼は、古代中国の重要な文化的伝統を忠実に再現していました。
この儀式は単なる形式ではなく、
若い女性が社会の一員として責任を持って生きていくための精神的な準備を整える
深い意味を持った通過儀礼だったのです。
現代の成人式とは異なる、古代中国の成人観や女性観を垣間見ることができます。