春秋戦国時代の貨幣「布銭」とは
「布銭(ふせん)」と聞くと、現代の私たちは布製のお金を想像してしまいがちですが、
実はこれは青銅製の貨幣なのです。
春秋戦国時代(紀元前8世紀~紀元前3世紀)に、韓・魏・趙の三国で鋳造されたこの貨幣は、
華北・華中を中心に国境を越えて広く流通していました。
現在でも台北の故宮博物院などで実物を見ることができます。
『コウラン伝』に見る布銭の価値体系
人気漫画『コウラン伝』では、布銭を使った当時の価値体系が具体的に描かれています:
植物の価格
- 普通の苗木:布銭1枚
- 王宮の苗木:布銭2枚
人間の価格
- 普通の奴隷:布銭30枚
- 宮中の奴隷:布銭100枚
現代価値に換算してみると…
仮に普通の苗木を現在価値で5,000円と換算してみましょう。すると:
- 布銭1枚 = 5,000円
- 普通の奴隷(布銭30枚)= 15万円
- 宮中の奴隷(布銭100枚)= 50万円
この計算でいくと、人間一人の価値が現在の15万円から50万円程度ということになります。現代の感覚からすると驚くほど安い価格設定です。
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古代の人間の価値について考える
この価格差は、当時の社会構造を反映しています:
社会階層による価値の違い
宮中の奴隷が普通の奴隷の3倍以上の価値を持つのは、宮中での訓練や教育を受けた技能の違いを示しています。技能が高ければ、価値が高い。
労働力としての人間
古代においては人間は貴重な労働力でしたが、同時に維持費用(食費、住居費など)もかかるため、その価値は現代ほど高くありませんでした。
時代背景
戦乱の時代であったため、戦争捕虜や難民が多く、労働力の供給が比較的豊富だったことも価格に影響していたでしょう。
まとめ
布銭の価値体系を通じて見ると、春秋戦国時代の経済状況や社会構造が浮き彫りになります。
人間の価値が「めちゃくちゃ安い」と感じるのは、現代の人権意識や経済構造との大きな違いを物語っています。
現代の私たちがいかに恵まれた時代に生きているかを改めて実感させられます。
参考:台北故宮博物院所蔵の布銭実物、ドラマ『コウラン伝』での価値設定