宮中に流れた悪意ある噂
大宋宮詞 27話では、宮中の宴で起きた事件が、一人の女性の運命を左右しようとしていました。
禁忌とされる山猫が宴に現れ、貴妃が怪我を負った時、
その責任を劉娥に押し付ける噂が流れ始めたのです。
「劉娥が山猫を呼び込んだ」という根も葉もない噂でしたが、宮中では瞬く間に広がっていきました。
楊美人は心配し、劉娥に皇帝からの勅令で噂を止めてもらうよう提案します。
しかし、劉娥の答えは意外なものでした。彼女は古代中国の治水の物語を持ち出したのです。
鯀の失敗:力で抑え込もうとした結果
黄河の洪水に悩まされていた古代中国で、禹の父である鯀(こん)が治水事業を任されました。
鯀が選んだ方法は「湮」(いん)—堤防を高く積み上げて水を封じ込める方法でした。
天帝の土を盗んでまで堤防を築き、あらゆる場所から土をかき集めて堤防を高く丈夫にしました。
しかし、黄河の激流の前では、その努力も虚しく堤防は決壊。
洪水は毎年のように発生し続けました。
禹の成功:流れを利用した智慧
父の事業を継いだ禹は、全く異なるアプローチを取りました。
堤防で無理やり水を抑え込む「湮」ではなく、
水の流れを導く「導」(どう)という方法を選んだのです。
禹は地形を巧みに利用しました:
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- 低い土地はさらに低くして水路とする
- 高い土地には土を盛って、より高くする
- 川の水が自然に海へと流れるルートを作る
結果として、川は滞ることなく海に向かい、堤防の決壊は止まりました。
劉娥の智慧:噂を「導く」という発想
この古典の教えを現代の問題に当てはめて、劉娥は楊美人に説明しました:
「無理に噂を止めようと躍起になって人の口を塞いで歩いても堰き止められない。
ならば、人の噂話を上手に利用して自分の有利になるように流す」
鯀のように力で抑え込もうとすれば、かえって反発を招き、
噂はより激しく広がるかもしれません。
しかし禹のように、噂の流れを理解し、それを自分に有利な方向に導くことができれば、
逆に味方にすることも可能なのです。
現代に活かせる教訓
この古典の智慧は、現代の私たちにも多くを教えてくれます:
問題を力で押さえつけようとするのではなく、自然な流れに沿った解決策を見つける。
なぜその噂が生まれ、なぜ広がるのかを理解することで、より効果的な対処法が見えてくる。
不利な状況を、創意工夫によって有利に変える可能性を常に探る。
劉娥の智慧は、単なる政治的駆け引きを超えて、
人生の困難に立ち向かう普遍的な教えを含んでいるのです。
水は岩をも削る力を持ちながら、常に低きに流れる。
その謙虚さと柔軟性こそが、最終的な勝利を生み出すのかもしれません。