ドラマ『大宋宮詞』第43話では、中国古代の重要な儀式である「加冠の儀」の再現を見ることができます。この儀式は男性の成人を祝う神聖な通過儀礼で、現代でいう成人式にあたるものでした。
加冠の儀とは
加冠の儀(かかんのぎ)は、中国古代における男性の成人式です。
通常、男子が20歳に達した時に行われる重要な儀式で、
社会の一員として認められることを意味していました。
しかし、ドラマで描かれた受益(のちの仁宗皇帝)の場合は、
(受益の名前の意味は天命を受け、国と民に利益をもたらすです)
わずか10歳で儀式が執り行われました。
これにより、受益は正式に皇太子としての地位を宣言されたのです。
儀式の準備と流れ
加冠の儀を行うには、まず吉日を選び、儀式に参加する客人を選定します。
そして、天地と祖先への供え物を捧げ、神々の加護を祈ります。
この準備段階から、儀式の神聖さと重要性が伺えます。
三度の戴冠 – 権力の象徴
加冠の儀の最も特徴的な部分は、3つの異なる冠を順番にかぶる「三度の戴冠」です。
それぞれの冠には深い意味が込められています。
第一の冠:上冠(しゃんぐあん)shàngguàn
行政権限の象徴
最初にかぶるのは黒い麻の素材でできた布の冠です。
これは政治に参加し、国を治める権利を表しています。
具体的には朝堂に入り、社会的責任を担う資格があることを示します。
第二の冠:遊冠(ヨウぐあん)yóu guàn
軍事指揮権の象徴
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次に白いバックスキンでできた革弁をかぶります。
これは国土を守るための軍務を司る権限を表し、
軍の指揮官としての資格を示しています。
第三の冠:礼部試帽(らいぶしぼう) lǐ bù shì mào
祭祀権の象徴
最後に古代の儀式用帽子である黒冠の赤冠をかぶります。
これは大廟に入り、重要な儀式に参加する権限を表しています。
皇帝や貴族の正装である袞冕(こんべん)の着用も、この段階で行われます。
儀式後の祝宴と敬意表明
三つの冠をすべて身に着けた後は、盛大な宴会が催されます。
受冠者は順番に兄弟、支援者、そして部屋にいる叔母や姉妹に敬意を表します。
その後、儀式で着用していた衣装を脱ぎ、玄武岩色の帽子と服に着替えて、
贈り物を持参して国の王や大臣などに敬意を示します。
歴史的変遷と消失
加冠の儀式は周王朝時代から始まり、明王朝まで長い間続けられた伝統的な儀式でした。
しかし、満州族による清王朝が中国を支配するようになると、
多くの中国の習慣や伝統が変更を余儀なくされ、
加冠の儀も次第に衰退し、最終的には消滅してしまいました。
まとめ
『大宋宮詞』で描かれた加冠の儀は、
単なる成人の祝いを超えた、権力の承継と社会的地位の確立を表す重要な儀式でした。
三度の戴冠を通じて行政・軍事・宗教の三つの権限を象徴的に授与される様子は、
古代中国の政治制度と文化の深さを物語っています。
現代では失われてしまった貴重な伝統を、
このようなドラマを通じて知ることができるのは、とても意義深いことといえるでしょう。