「蟷螂の斧」- 中国古典から学ぶ身の程知らずの教訓
中国時代劇「大宋宮詞」第50話で印象的なシーンがありました。
宋の皇帝趙恒が崩御した後、曹鑑とその娘曹思斉は、
皇帝の弟で娘婿でもある冀王を皇位に就けようと企みます。
しかし曹鑑の息子である曹利用は、この計画に反対しました。
父親に向かって放った言葉が「蟷螂の斧だ」でした。
兵権もない状況で皇位簒奪を図るのは、まさに身の程知らずな行為だと諌めたのです。
「蟷螂の斧」の由来と意味
蟷螂が斧を以て隆車に向かう
(とうろうがおのをもってりゅうしゃにむかう)
この故事成語は、カマキリが前足を振り上げて大きな車に立ち向かう様子を表現しています。
自分の力も顧みずに強者に刃向かう、
つまり身の程知らずな行為を戒める言葉として使われてきました。
春秋時代の教訓 – 蘧伯玉の智恵
故事の起源は中国春秋時代に遡ります。
衛国である人が太子のお守り役に任命されましたが、
太子の凶暴な性格を知って大臣の蘧伯玉に相談しました。
蘧伯玉は答えました:
「螳螂を知らざるか、其の臂を怒らして以て車轍に当たる」 (ご存じないですか、轢き殺されるのもわからず前脚をふりあげて大きな車に立ち向かっているカマキリのことを)
王に任命されたからといって、
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王や太子の権威に抗うような身のほど知らずは痛い目に遭う、と諭したのでした。
曹操も使った「蟷螂の斧」
三国志の英雄・曹操でさえ、この表現を使いました。
袁紹の大軍に立ち向かう際、「蟷螂の斧を以て、隆車の隧を禦がんと欲す」
(蟷螂の斧によって、大軍を押しとどめようとした)と自らの状況を表現しています。
圧倒的な兵力差を前にしても戦う決意を示す一方で、
その困難さを冷静に認識していた曹操の心境が窺えます。
現代に通じる教訓
「蟷螂の斧」という故事成語は、単に無謀な挑戦を戒めるだけでなく、
現実を正しく把握する重要性を教えてくれます。
- 自分の実力と相手の力量を冷静に分析すること
- 勝算のない戦いに挑むリスクを理解すること
- しかし時には、負けを承知で立ち向かう勇気も必要であること
ドラマの曹利用のように、家族の無謀な計画を止める智恵も、この古典から学べますし、
しかし、曹操のように、冷静に認識することも学べます